Quantcast
Channel: てつさんの道楽モノ日記
Viewing all articles
Browse latest Browse all 788

すきやき。

$
0
0
私の母の話


女でひとつで私を育ててくれた我が母。


まあ絵にかいたような肝っ玉母ちゃん


動き回るのが大好きで


私がアクティブなのは間違いなく母譲りだと思う


数年前から透析を受けていて


今では片足がろくに動かない


最近では利き手もうまく動かせないそうだ


そんな母も73歳になった。


今回帰省した時


帰る日の朝、母がすき焼きを作ってくれた


手足が不自由になってから、母の手料理を食べるのは久しぶりだった


前の晩の暴飲暴食がたたり、胃もたれ全開だったが


せっかく作ってくれたから食べることにした


「味はどげんね?」


母は聞いてきた。


薄かった


「うん。ちょっと薄かね…。」


正直に答えると、母は不自由な手にも関わらず器用に味を調えた。


「うん。この味ね!」


私がそう答えると、「そうね。そうね。」と嬉しそうに答えていた。


私は全くお腹が減っていないので、困ったなぁと思いながら食べ続けた。


だけど懐かしい母の味が何だか嬉しかった


ふと母を見てみると


まるで幼子に接するような優しい顔で


ンフンフ笑いながら私を見ている


年はとったけれど


私が小さい時に見た母の表情である


息子が食べている姿を見て


きっと嬉しいのだろう。


「あのさ、こんなおっさんになっても我が子って可愛いもんなの?」


そう聞いてみると


「当たり前やかね!」と少し怒ったように母は答えた


そのあと、ポツリと「いくつになっても我が子は可愛か…。」と呟いた。


結局半分も食べきれなかったが、数年ぶりに食べた母の手料理に満腹とも違う何とも言えない充足感を覚えた。


今まで年1回だった帰省するペースを増やしたのは、少しでも母と過ごす時間を増やすため


あと何回会えるんだろう


一生食べ続けられると思っていた母の手料理


あと何回食べられるのだろう


透析の時にしか車椅子で外出出来ないなんて


さぞかし悔しいだろう


元気なお年寄りを見ると、最近何だか恨めしくさえ思えてしまう


全く親孝行出来ていないけれど


少しでも長崎に帰る機会を増やすことが


今できる精一杯の親孝行だと思う


あれだけ母と離れたくて仕方無かった十代の頃


気付けば長崎を飛び出していて


今となってそんなことを言うのも虫がいい話なのだが…


いや


今だからこんな気持ちになれるのかもしれない。


最近、鏡にうつる自分の顔が


やたらと母に似てきているように感じる


またすぐ長崎に帰ろう


そして母の手料理を食べよう


あと何回食べられるのかわからないんだから





ではでは。






Viewing all articles
Browse latest Browse all 788

Trending Articles